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黄色い目の魚 パートⅡ

こんにちは、学生編集長です。
佐藤多佳子さんの『黄色い目の魚』、ようやく読み終えました。
学祭の準備etc、で結局最後の三分の二を読むのに時間が必要だった。
読書をするときはいつもそうなんですが、僕は最初の150ページはさっさと読むのだけれど、250ページあたりから不意に読むのを中断してしまうことが多々あります。
ドラマとかゲームも同様で、ドラマだったら第十話・ゲームだったら終盤突入直後くらいに、楽しむことを止めてしまう。
なぜなんだろう?
たぶん、楽しむことをやめる終わりがくるのが嫌なんだろう。


だから今回、『黄色い目の魚』の場合も「最後まで読むぞー!えいっ!」ってな気合いが必要だった。物語の終局に向かって無邪気に加速できたのは、僕がまだ中学生くらいの頃で、今は終盤になるにつれ、どうも雑念が入ってしまうようで、「もうここいらでいいんじゃないか」と思ってしまうから。
雑念っていうのは、「終わらなければいい」なのかな。
例えば、キャラ小説の二次創作があるけれど、あれは「終わらない、模造されていくもの」であって、「終わらない」ことは約束されているけど、僕にとっては「オリジナルが大切」だから、「二次創作があるから、僕の中でのその作品は続く」っていうわけではない。


そういう意味で、『黄色い目の魚』も僕にとっては大切な物語だった。
「終わらなければいい」と思って読むのを躊躇してしまうほどの作品。
ひとつの世界が彩々とした膨張をみせて、最終的に収束していくのが怖いと思ってしまうような。


佐藤多佳子さんは大学二年生のとき、『黄色い目の魚』のもととなる短編を書いたそうです。
大学二年生って言ったら、いまの僕と同じだ。
それから十年経って、作家として活動し始めてから、リライト。
高校生の木島悟がクラスメイトの村田みのりをスケッチする不思議な関係は、短編から長編へ――。
湘南・鎌倉を舞台とする世界は急速に色づいて(しかしあのあたりって地理的な印象では、延々と灰色の空と海のようなイメージが僕にはあるけれど)、本作のテーマのひとつである『絵』に様々な形で関わろうとする魅力的なキャラクターも、その際に生まれたんだろう。
そして、また十年の歳月が経ち、『黄色い目の魚』は単行本化しました。


文庫版(新潮文庫)のあとがきで佐藤多佳子さんは、『(黄色い目の魚を)収録して本を作りたいというのは、実のところ長年の夢でした。(中略)単行本化の夢がかなったわけなのですが、いざ短編を並べてみると、さすがに十年前の作品は微妙に違います。文章の話やリズムなどが。でも、今、書き直すと壊れてしまう気がして、細かいところをいじっただけで、そのままの姿で残しました。』と書いています。
『黄色い目の魚』を佐藤多佳子さんが語るとき、『昔の短編からはみ出すように生まれ出た、エピソードやキャラクターやイメージの亡霊どもが心の中に棲みついた』とも言っていて、その素敵な亡霊たちが、佐藤さんに、『黄色い目の魚』という精緻に完成された世界を書け書け、とせっついていたのだと思います。


佐藤多佳子さんにとっては本作が、作家としての自分のルーツとなる作品であり、かけがえのないスタートラインであることは、読者から見ても明らかです。
人が変わるには十分なほどの、十年という長い歳月を佐藤さんが歩き切ったとき、佐藤さんは一度後ろを振り返ってみて、『黄色い目の魚』を見つめるのかもしれません。
そして、また創造に満ちた様々な亡霊たちが佐藤さんに対して、「はやく続きを書けえ~!!」と叫ぶのかも。そうしたら、両手で頭を守るようにして、佐藤さんは「はいはい、ただ今」と言って、素敵な亡霊たちの声を成仏させていくのでしょうか。
一読者として、次の十年後が楽しみになります。


では、今日はこれにて!
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Author:法政文芸編集委員会
法政大学国文学会が発行する文芸誌「法政文芸」編集委員によるブログ。編集の様子やオススメ本の紹介など、個性豊かに発信していきます。法政文芸のバックナンバー、その他のご質問はこちらまで→hosei.bungei@gmail.com

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