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【レビュー】 『四畳半神話大系』 森見登美彦


 あの時、もしも違う選択をしていたら自分は今とは全く違う人生を送っていたかもしれない。本書『四畳半神話大系』は、そんな誰しも人生において一度は夢想するであろう願望をモチーフに、性根のねじ曲がった大学三回生である「私」を実にユーモラスに描いた作品である。

「薔薇色のキャンパス」を夢見る冴えない大学生の「私」は、大学に入ったばかりの春にどのサークルで華やかなキャンパスライフを送ろうかと迷う。数ある新入生用のビラの中で特に惹かれたのは、次の四枚。映画サークル「みそぎ」、「弟子求ム」という奇想天外なビラ、ソフトボールサークル「ほんわか」、秘密機関〈福猫飯店〉。そして、この4つのビラのうちどれかを選択した時点で、「私」の人生は平行して進んでいく。映画サークルを選択した人生、奇想天外なビラについていった人生、ソフトボールサークルに入会した人生、秘密機関に身を置いた人生。
 これらの人生が平行して進んでいき、全て「小津」に出会い、大学生活の二年間を棒に振り、最終的に「小津」に責任を転嫁して終わる。そして最終話「八十日間四畳半一周」でそれらの平行世界を旅してまわることになる。それらは微妙に異なって入るが、結局「薔薇色のキャンパスライフ」にたどり着くのはひとつとしてない。

 森見登美彦氏は、この自己愛と自意識が過剰な大学生のあきれるほどにばかばかしい青春の煩悩を、知的で硬派なモノローグにのせて鮮やかに表現している。共通する仕掛けを各話に散りばめ、それぞれを異なった方法で出現させ、四話すべてを読むことによって初めて全容が明らかになるという非常に趣向の凝らされた作品である。しかし、どの話も登場人物は一人として魅力に欠くことはなく、京都の街並みの描写は読者の想像をかきたてる。滑稽だが憎めない登場人物にクスリとさせられた時、読者はすでに森見ワールドの虜となっているのだ。


四畳半神話大系 (角川文庫)四畳半神話大系 (角川文庫)
(2008/03/25)
森見 登美彦

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法政大学国文学会が発行する文芸誌「法政文芸」編集委員によるブログ。編集の様子やオススメ本の紹介など、個性豊かに発信していきます。法政文芸のバックナンバー、その他のご質問はこちらまで→hosei.bungei@gmail.com

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