スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【レビュー】 『三四郎』 夏目漱石

 前期三部作の一つであるこの作品は漱石が本格的に小説家への道を歩み始めた明治末期に書かれた彼の代表作の一つである。余裕派と呼ばれる現実をゆったりと眺めた反自然主義的な初期の作風から、人間の内面を描くような作風へと変化していく中で書かれた『三四郎』は、彼の作品を読む中で重要な位置を占めている。

 大学進学のために熊本の実家を離れ単身上京した小川三四郎は、東京が田舎の常識とは全く違うものであることに驚く。そこで会う野々宮などの学者、学生との交流は田舎にいた三四郎にとって大きな刺激となる。そしてその中で美禰子と出会い、初めての恋を経験する。彼女は、迷える子(ストレイシープ)という言葉を耳打ちするなど、曖昧な態度を取り続けて彼を翻弄し続ける。しかし最終的には兄の友人と結婚してしまう。三四郎の初恋はかなわないものになったが、彼はこの恋愛や学問との触れ合いの中で今の日本社会について批評することになる。

 恋愛小説に見えるこの作品であるが、実際はこの批評というのがこの小説におけるテーマである。三四郎は美禰子の結婚式に誘われるが断る。ここで美禰子への恋慕は無くなっており、恋は終わっている。対してこの小説一番描かれているのは三四郎が東京の状況、社会の現在について考える場面である。それは漱石自身が三四郎という青年を通じてこの小説で自分の日本に対する批評を行いたいという理由があったのではないか。とはいってもこの小説において恋愛は欠かせない要素であろう。

 美禰子と出会った後、三四郎は自身の世界を三つに分ける。一つは自分がいた熊本、郷里の世界である。二つめは野々宮のいる学問の世界、そして三つめは美禰子のいる華美あふれる世界である。彼は三つ目の世界に行きたいと願い、同時に三つの世界が混じり一つになる方法を探る。しかし最終的にはそれが無理であると悟る。それは田舎から夢を持って出てきた青年が現実を直視し、具体的な方法を模索する大人への成長でもあった。激変する社会にもまれ成長する姿には、自分も同じ大学生として感化される。映画化もされ、青春小説の金字塔といえるべきこの小説をぜひさまざまな角度で読んでほしい。


三四郎 (新潮文庫)三四郎 (新潮文庫)
(1948/10)
夏目 漱石

商品詳細を見る



スポンサーサイト
プロフィール

法政文芸編集委員会

Author:法政文芸編集委員会
法政大学国文学会が発行する文芸誌「法政文芸」編集委員によるブログ。編集の様子やオススメ本の紹介など、個性豊かに発信していきます。法政文芸のバックナンバー、その他のご質問はこちらまで→hosei.bungei@gmail.com

最新記事
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
リンク
人気ブログランキング
ブログランキング参戦中!ぜひ、1クリックお願いします!
人気ブログランキングへ
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。