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【レビュー】 『もういちど生まれる』 朝井リョウ

 早稲田大学在学中にデビューした作家、朝井リョウが描く群像劇である。五人それぞれの視点から語られる連作短編集であり、それぞれ五つの話は世界観を共有しており、短編ごとにリンクしたり、ある短編の謎がその後の、別の短編で明らかになったりもする。

 この小説に出てくる学生たちは、いわゆるモラトリアムのなかで時間と自由をもてあまし、それぞれが不安や焦りを抱いている。タイトルにあるようにこの作品は、彼等が「もういちど生まれる」過程を描いたものである。

 例えば、表題作の「もういちど生まれる」では、美人で器用な双子の姉にコンプレックスを抱く浪人生の妹である梢が、姉の変装をして、姉が出演する学生映画に代わりに出ようとする。妹であることがばれずに気を良くしていたが、最後飛び降りるシーンの直前に梢だと気づかれてしまう。彼女はどうして姉の変装なんてしているのか、羞恥でどうしようもなくなってしまうが、梢は自分を受け入れて、姉ではなく自分自身として飛ぶ。その時、彼女は「もういちど生まれ」たのだ。

 この短編集は短編ひとつひとつをバラバラに読んでもあまり感動は得られないだろう。ここに描かれているのは、情熱的で激しい大きな青春なのではなく、静かで孤独な小さな青春であるからだ。しかし、この小説は連作短編集であり、それぞれの短編が入り組むようにして一つの物語をつくり上げている。短編から短編へと読み進めていくうちに、すでに読んだ短編がさらに深い物語として、印象が変化していく。最後に全ての短編を読み終え、小説全体を俯瞰した時には、短編それぞれが相互に作品の深みをつくり出し、短編をそれぞれ読んだときとは比べ物にならない感動を得られることだろう。

 連作短編、群像劇という形式を、デビュー作である『桐島部活やめるってよ』、『もういちど生まれる』の後に発表した『少女は卒業しない』においても選び、こだわってきた作者であるが、そのことによって、学生という全体的な漠然としたものを描き出すことに成功しているのかもしれない。

 朝井リョウという学生作家が「僕の大学生活のすべて」だと言う現代の学生の姿を描いた小説を、学生というものを考えるうえで、今まさに読むべきものだと言えよう。


もういちど生まれるもういちど生まれる
(2011/12/09)
朝井 リョウ

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法政大学国文学会が発行する文芸誌「法政文芸」編集委員によるブログ。編集の様子やオススメ本の紹介など、個性豊かに発信していきます。法政文芸のバックナンバー、その他のご質問はこちらまで→hosei.bungei@gmail.com

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