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【レビュー】 『青春の蹉跌』 石川達三


 現在最も注目を受けるであろう文学賞となった芥川賞、その第一回受賞者である作者のこの中編作品は、豪華なキャストで映画化され、現在でも読み続けられるベストセラーとして知られている。

主人公の江藤は法学部で司法試験を受けようとしている学生で、専攻のみを学び人格的には未発達な印象を受ける。そして彼は民主主義の日本でどのようにすれば将来裕福な生活ができるかを常に考えている。理想論は掲げず、ただ現実のみを見て、成功のためには屈辱も受けるという強い出世欲を持っていた。彼の家は貧しかったのが大きな理由である。そのため登美子という学生の家庭教師をして家計を助けた。その中で二人は肉体関係をもつようになっていた。大学に行けているのは裕福である叔父から援助を受けていたためだった。江藤の目標は叔父が求めている司法試験に合格し、叔父の娘である康子と婚約をかわすことであった。登美子との関係を続ければ、彼の目標は遠くなっていく。未来のことに目を向けすぎて今のことを見ていない江藤の行く先はどうなるのか。

 江藤の将来を見据えそのために今を生きる姿は現代の安定志向を目指す若者にも当てはまるところである。近年の不況による就職難は、その風潮をますます加速させている。理想的な世界に変えるために学ぶのではなく、現在をいかにいきるかを学ぶ。それはまさに現代的で現実的な選択である。実際自分より優秀であった人物が、共産主義に肩入れして警察に捕まったときにも、それが色濃く表れている。革命や政治の理想を説く学生は、この小説が書かれた一九六〇年代においては典型的な学生であり、うまく時代背景とマッチさせている。

青春の蹉跌とはいえない重いテーマが、この小説には描かれている。読み終わったあとには実際に青春を生きている学生にも、再び今と未来について考えさせられていることだろう。(文責:澤砥)


青春の蹉跌 (新潮文庫)青春の蹉跌 (新潮文庫)
(1971/05)
石川 達三

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法政大学国文学会が発行する文芸誌「法政文芸」編集委員によるブログ。編集の様子やオススメ本の紹介など、個性豊かに発信していきます。法政文芸のバックナンバー、その他のご質問はこちらまで→hosei.bungei@gmail.com

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