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【レビュー】 『十九、二十』 原田宗典

 青春はけしてきらきらと輝くものばかりではない。19歳や20歳のなかで美しく爽やかな青春を楽しむ人など、ほんの一握りにすぎない。

 大学生である私も、昔は19歳から20歳になる時にはきっと未来を切り開いていく力を持ち、きらきらした人生を歩んでいるのだと確信していた。しかし実際は20歳を迎えた所で何も変化はなく、親から完全に自立するなんてことも、楽しい毎日が待ち構えているなんてこともなかった。そんな大学生であるからこそ、この本はとても面白かったし、素直に読むことが出来た。

 この小説では、主人公である山崎が2日早い20歳の誕生日を迎えるまでの数週間の「青春」が書かれている。山崎は岡山から上京し、東京の大学に通う学生である。彼女には棄てられて、父親は唐突に仕事を辞めて借金を作ってしまった。夏休みになり、帰省するためのお金を稼ごうとした山崎がバイト紹介所を通じて働くことになったのは怪しげなポルノ雑誌の出版社であった。山崎の過ごす20歳までの日々はけして輝いておらず、周りの身勝手な大人達によって振り回される。

 私は山崎のように法律で規制されてしまいそうなポルノ写真集を配達したりビニール詰めしたりなどという危ないアルバイトをしたこともないし、私の父親は山崎の父親のように借金まみれでも麻雀漬けでもない。年齢は同じだが、山崎とは全く別の環境に生きている。しかし山崎と私には共通点があった。それは、青春に輝きなどなく、未来を切り開いていこうなんて活力も持たないまま惰性で日常を過ごしているという点である。

 青春小説と聞いて、爽やかな汗や熱い友情、甘酸っぱい恋愛等を思い浮かべるような人にこの小説はおそらく向いていないだろう。しかしそのような青春のイメージに違和感を覚える人には自信を持って勧められる小説だ。読み終えればきっと、テレビや小説などで輝く青春ばかりを目にして不安に感じてしまっていた心も落ち着くはずだ。青春はけして薔薇色の日々などではなく、未来を切り開かずとも生きている限り勝手に日々は流れていくのだ。たとえこの小説の表紙の青年のように俯いて歩いていても。それは、山崎も、青春を過ごす私達も皆同じである。(文責:菅野)


十九、二十(はたち) (新潮文庫)十九、二十(はたち) (新潮文庫)
(1992/11)
原田 宗典

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