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【レビュー】 『長い終わりが始まる』 山崎ナオコーラ


 マンドリンサークルに所属する小笠原は、就活や恋、勉強そっちのけで、マンドリンに打ち込んでいる大学生四年生。周りの同学年がコンサートマスターや、コンダクターなどの肩書をもっている一方で、小笠原は人一倍時間や金をマンドリンに打ち込んでいるのに、なんの肩書も得ることができず弱い立場にいる。

「おまえら全員、そこで調和してろ!私は調和しない!」

小笠原は「キレイごと」を嫌うかのようにサークルのみんなと協調しようとしない。サークルの上下関係や、役割の運営に関しても不満を沢山持っている。しかし、小笠原はサークルに片思いでもしているかのように自分から退部することはない。そんななかでコンダクターの田中とは唯一音楽の話を通して語り合い、繋がりあう。しかし、ふたりの関係は始まりそうで始まらないし、途絶えそうで途絶えない。

音楽を極めるより「友達作り」や「思い出作り」を目標にやっている「みんな」、と壁を感じている小笠原はサークルの中で度々突飛な行動を起こしもする。卒業演奏をみんなでキレイに作り上げようとすることにも納得がいかない小笠原であったが、少しずつ心を通わる喜びを感じるようになる。

 曖昧な位置、曖昧な感情がぐるぐると主人公を取り囲んで物語はゆるゆると進んでゆく。大学生、という時期は大人だけど、大人になりきれていない曖昧な時期だ。

『将来に繋がる就職活動よりも、先のないサークル活動に力を注ぎたい。恋人でない男の子と音楽を作ることが、ストイックで、刹那的で、高潔な活動で、今しかできない大事なことなのだ。今だけ生きて、あとで死にたい。』
 
 いつまでもその「瞬間」が続いていくかのように思えたり、でも感情や環境はしっかりと確実に変わっていったり。いつが終わりなのか始まりなのかは、果てしなく曖昧である毎日を主人公は過ごしていく。休符があったり、クレッシェンド、デクレッシェンドがあったり、ダカーポがあったり、大学生活はまるで、オーケストラの楽譜みたいだ。頑固で熱い気持ちと、どこか寂しげでヒリヒリするような感情の繋がりが心地よい、青春小説。(文責:澤)


長い終わりが始まる (講談社文庫)長い終わりが始まる (講談社文庫)
(2011/10/14)
山崎 ナオコーラ

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法政大学国文学会が発行する文芸誌「法政文芸」編集委員によるブログ。編集の様子やオススメ本の紹介など、個性豊かに発信していきます。法政文芸のバックナンバー、その他のご質問はこちらまで→hosei.bungei@gmail.com

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