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【レビュー】 『モッキンポット師の後始末』 井上ひさし


 井上ひさし氏といえば、私の場合、『ひょっこりひょうたん島』を頭に浮かべる。平成四年生まれの私でも、あの有名な歌をよく歌ったものだ。
 さて、今回の作品は『モッキンポット師の後始末』であるが、まず物語のあらすじを講談社文庫から紹介したい。

 食うために突飛なアイデアをひねり出しては珍バイトを始めるが、必ず一騒動起すカトリック学生寮の〝不良〟学生三人組。いつもその尻ぬぐいをさせられ、苦りきる指導神父モッキンポット師――ドジで間抜けな人間に愛着する著者が、お人好し神父と悪ヂエ学生の行状を軽快に描く笑いとユーモア溢れる快作。

 主人公とその友の三人組は不良などと言うが、その実情は毎日まともな食事にありつくのも難しい、普通の苦学生である。ただ、金を稼ぐために万引きをしたり、ストリップ劇場で働いたりは、カトリック信者として(前者はそうでなくともであるが)許されないものであった。毎回彼らの起こした問題の尻拭いをするのが、お人好しのモッキンポット師である。しかも同時に、モッキンポット師は彼らの職業安定所的存在でもあり、職を失えば次のところに保証人として彼らを紹介し、また騒動が起きる、という繰り返しだ(物語の舞台は簡単にバイトが見つかる時代ではない)。三人が暮らしていた極貧の聖パウロ学生寮は、皮肉なことに、彼らが食費・寮費を稼ごうと張りきるたびに没落の一途をたどり、ついには住む場所さえも失うのだ。当然、彼らについてくれるモッキンポット師にも損が降り積もる。

 不良と言えども根は真面目な三人。前回の失敗を繰り返さぬよう、温かい周りに報いようと、善意の行為も悲しきかな、最後はやはり失敗に終わる。そんな彼らと聞こえようによっては聖人君子などこか抜けてるモッキンポット師。悪知恵の発想力と若さゆえの行動力に乗りまくっている様は、褒められたものではないのだが気持ちがいい。それだけではなく、モッキンポット師を通して道徳について考えさせられるのもこの作品の面白いところだ。罪は罪、というわけではなく、「生きるための嘘や。天に在します御方も見て見ぬ振り、見逃してくださると思いますけどな」と言って三人を詐欺紛いの手段で聖ピーター修道会に紹介したモッキンポット師が強く印象に残っている。無宗教者ではなく、根っからのカトリック神父がそう言うのだ。汚れた金を稼ぐのは駄目、時折の嘘は仕方ない。矛盾しているようで一貫した観念で三人組を導くお人好し神父の物語。私としては一押しの作品だ。(文責:三好)


モッキンポット師の後始末 (講談社文庫)モッキンポット師の後始末 (講談社文庫)
(1974/06/26)
井上 ひさし

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