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【レビュー】 『ノルウェイの森』 村上春樹


 村上春樹の『ノルウェイの森』は一九八七年に発表された書き下ろし作品である。多くの読者を得た作品であり、現在単行本・文庫本等を含めた日本における発行部数は一〇〇〇万部を超えている。本作は三十七歳の「僕」が回想する形式で語られており、主に一九六九年という学生運動の時代を背景として、「僕」と直子、「僕」と緑、この両者との関係が中心となって描かれている物語である。

『ノルウェイの森』は「100パーセントの恋愛小説」というキャッチコピーのもとに出版され、恋愛小説として受容されてきた。確かに小説内では「僕」をめぐる恋愛が描かれており、その意味では恋愛小説と言えるのかもしれないが、この作品における恋愛が成立していたのかどうかは疑問である。村上春樹自身も「『ノルウェイの森』は正確な意味では恋愛小説だと言えない」として、「この小説をあえて定義づけるなら、成長小説という方が近いだろう」と発言している。

 作中において「僕」は多くの女性と簡単に関係を持つ、これは他の村上春樹の小説においても見られるが、そのような肉体関係は軽いものでしかなく、恋愛を描けていない、などという反応さえ見ることができる。しかし、そのような批判は、村上春樹の描こうとしているものを考えたのならば、あまり意味をもたないだろう。

 むしろその軽さは、他者と誠実に向き合えなくなってしまった現代の人間の問題を、恋愛の不可能性を描き出していると考えられないだろうか。実際、作中において「僕」は直子を「待つ」ことができない。そして緑の方へ進もうとするも、それも果たされないであろうことが示唆されて終わる。十八年後の「僕」が飛行機のなかで孤独を感じ、そこに誰かの影を感じることができないことからもそれが窺える。

 確かにこの作品は「100パーセントの恋愛小説」なのかもしれない。ただしそれは、恋愛をする人間を描いたものではなく、恋愛ができない人間を描いたものなのだろう。村上春樹はこの作品にポストモダン的な問題を持ち込んだと答えている。ポストモダンにおける「恋愛」の不可能性、人間が陥った孤独を描いた作品が『ノルウェイの森』なのだ。(文責:伏見)


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