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【レビュー】 『金閣寺』 三島由紀夫


 主人公の「私」は幼少の頃から父に「金閣ほど美しいものは此世にない」と何度も教えられ、美というものに執着して生きてきた。また彼は吃音というコンプレックスのために、世界との間に壁を感じてしまっており、周囲の人間ともうまく付き合うこともできずにいる。柏木などの友人と交流していき、一時、自身の生に満ち足りたものを感じたりさえするものも、ついには「金閣を焼かなければならぬ」と決意し、彼は金閣寺と心中することを選ぶ。

 この作品はまさしく美を求めた文学だと言ってもいいだろう。それは文体の面においても同じであり、徹底した美的文体によって、その美的緊張感が絶えぬままに作品は語られ続ける。ここで語られる美=金閣寺というものは戦後失われてしまったものだと考えられるだろう。金閣寺は結末にて、炎上し失われてしまう。ここにこそ、この作品の悲劇性が結実するのであり、敗戦によって美が失われてしまったことへの三島の憤りのようなものが表現されている。

 それは三島が抱えていた問題意識と密接に絡み合っている。語り手の「私」は自己の心理を透徹した分析によって解剖していき、人間の暗い部分や鬱屈としたものを露わにしいくが、これは三島自身の内にあるものと重なっていく。失われた美というものは三島にとっての「天皇」であったと言い換えることもできるだろう。美の象徴としての金閣寺が失われたのは、日本の象徴としての「天皇」が失われてしまったのとパラレルな関係にある。三島が抱えていた戦後の日本の問題意識なのであり、三島の中にあった悲劇であった。

 本作は、実際に起きた事件を基にして語られる。三島は金閣寺放火事件を媒介にして、自己の問題を語っているのだ。つまりは、三島の「仮面の告白」がここで行われているのだ。全青春の決算として綴ったという『金閣寺』には三島の存在が、三島の悲劇が、圧倒的な美しさとともに描かれている。(文責:伏見)


金閣寺 (新潮文庫)金閣寺 (新潮文庫)
(2003/05)
三島 由紀夫

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