スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【レビュー】 『クローバー』 島本理生


 この本の主人公は、大学生の双子、冬冶と華子。客観的な視点で冷静に物事を見る、地味な理系男子冬冶と、化粧バリバリ、積極的に行動する肉食系女子華子は、外見こそ似ていますが内面は全く似ていません。

 そんな二人が作品の中でふと、そっくりな台詞を漏らしています。

「べつに今の自分に満足していないわけじゃない。だけど自分の能力や色んな面に対して自信があるかと言われれば、むしろ後ろ向きなほうだと思う」
「たぶん、私があんまり誰かを本気で好きになれないのは、自分のことを好きじゃないからだよね」


 この台詞は二人の心の中に抱えている「不安」の一部を率直に表していると、私は思います。
 
 自分に100%自信がある人間など、なかなかいません。何かしらのコンプレックス、不安、あきらめ、絶望……そのようなどうしようもない思いを抱えながら、私たちは生きています。青春期は特に、子供から大人という社会的視線のカテゴリーの移行と自身の人生の方向性の選択という特殊な変化を求められる時期であり、大人になりきれない、また、子供のままでもいられない中途半端な位置にとまどう若者たちは皆、程度の差はあれ、「自分とは何か」「自分はどうあるべきなのか」という問いに直面し、葛藤するのです。

 作中、冬冶と華子もそんな変化の時期に、いろいろな人々と関わり、影響をうけていきます。自身の欲求に積極的に動く友、どこまでもまっすぐに好意をぶつけてくる相手、どこか反発を覚えていたけどやっぱり大きな存在であった両親、それぞれの意見が交差し、ぶつかり合い、築かれていく人間関係の中で、十分に悩みながら二人は様々な思いに折り合いをつけ、自分の答えを見つけていきます。

 この作品は、あとがきで作者の島本さん自身が「青春小説でも恋愛小説でもなく、モラトリアムとその終わりの物語、というとらえ方をするのが、自分の中では一番しっくりきます」と述べているように、はっきり恋愛小説とも青春小説とも区分することはできません。ですが思ってみれば、現実でも恋愛や青春やモラトリアムはそれぞれがそれぞれの構成要素であり、切り離すことなど出来やしないのです。

「ほっ」と優しく背中を押してもらいたいそんな時、青春期を卒業した大人も現在真っ只中の若者も、この作品の伸びやかな空気感に癒されてみてはいかがでしょうか。(文・飯村)


クローバー (角川文庫)クローバー (角川文庫)
(2011/01/25)
島本 理生

商品詳細を見る



コメントの投稿

非公開コメント

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです
プロフィール

法政文芸編集委員会

Author:法政文芸編集委員会
法政大学国文学会が発行する文芸誌「法政文芸」編集委員によるブログ。編集の様子やオススメ本の紹介など、個性豊かに発信していきます。法政文芸のバックナンバー、その他のご質問はこちらまで→hosei.bungei@gmail.com

最新記事
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
リンク
人気ブログランキング
ブログランキング参戦中!ぜひ、1クリックお願いします!
人気ブログランキングへ
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。