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法政文芸第八号完成報告

学期末の多忙につきご報告が遅れてしまいました。
すみません。

法政文芸第八号完成しましたー!

IMG_1020.jpg

実際に本の形になると感慨ぶかいものがありますね。
盛り沢山の内容になっていますし、読みごたえは十分です。
次の写真は学生編集委員の記念撮影です。

IMG_1010.jpg

書店の方にも順次置かせていただく予定です。
そういった情報もまたこちらで報告できればと思います。


法政文芸をお求めの方は、
hosei.bungei@gmail.com
までその旨を送ってくだされば対応させていただきますので、
どうぞよろしくお願いします。


法政文芸第八号目次


こんばんは
法政文芸第八号の発刊も目前に迫ってきました。
ということで今日は目次を公開したいと思います!


法政文芸第8号
特集・当世学生気質


巻頭詩
黙る夜
田中庸介


特集エッセイ
ファッションカンケイのひとですか
稲葉真弓


創作
きらい嫌い
新井春香
さようなら、靴よ
李潤喜
たたずむ
鍛代香
僕の足元にはうさぎがいる
長野桃子
うすらハゲと溺れる自意識
森太一郎



掌編セレクション
俺の舌
君塚日菜子

菅野星羅



インタビュー
恋愛してなくても友達作ればいいじゃん
山崎ナオコーラ


特集エッセイ
青春期の気づき
関口尚
青春花鳥、外濠を埋める
瀬戸良枝
楽園の修道女
中上紀
青春を書く
中村航
人生のある一時期
平野啓一郎



アンケート
青春小説アンケート
伊藤たかみ/海野碧/落合恵子/岳真也/笠原淳/勝又浩/車谷長吉/小池昌代/立石伯/中沢けい/中村文則/藤野千夜/前田司郎/枡野浩一/三田誠広/道浦母都子



連句
当世学生連句
留書―連句好みの法政学生気質

浅沼璞


年表
学生小説年表


ポートフォリオ
青春の地図


推薦作レビュー
当世書生気質
三四郎
限りなく透明に近いブルー
横道世之介




以上です。
諸事情により公開が遅れてしまいましたが、
7月5日木曜日には本誌が出来あがる予定ですので
ぜひ楽しみにしていただければと思います。

【レビュー】 『クローバー』 島本理生


 この本の主人公は、大学生の双子、冬冶と華子。客観的な視点で冷静に物事を見る、地味な理系男子冬冶と、化粧バリバリ、積極的に行動する肉食系女子華子は、外見こそ似ていますが内面は全く似ていません。

 そんな二人が作品の中でふと、そっくりな台詞を漏らしています。

「べつに今の自分に満足していないわけじゃない。だけど自分の能力や色んな面に対して自信があるかと言われれば、むしろ後ろ向きなほうだと思う」
「たぶん、私があんまり誰かを本気で好きになれないのは、自分のことを好きじゃないからだよね」


 この台詞は二人の心の中に抱えている「不安」の一部を率直に表していると、私は思います。
 
 自分に100%自信がある人間など、なかなかいません。何かしらのコンプレックス、不安、あきらめ、絶望……そのようなどうしようもない思いを抱えながら、私たちは生きています。青春期は特に、子供から大人という社会的視線のカテゴリーの移行と自身の人生の方向性の選択という特殊な変化を求められる時期であり、大人になりきれない、また、子供のままでもいられない中途半端な位置にとまどう若者たちは皆、程度の差はあれ、「自分とは何か」「自分はどうあるべきなのか」という問いに直面し、葛藤するのです。

 作中、冬冶と華子もそんな変化の時期に、いろいろな人々と関わり、影響をうけていきます。自身の欲求に積極的に動く友、どこまでもまっすぐに好意をぶつけてくる相手、どこか反発を覚えていたけどやっぱり大きな存在であった両親、それぞれの意見が交差し、ぶつかり合い、築かれていく人間関係の中で、十分に悩みながら二人は様々な思いに折り合いをつけ、自分の答えを見つけていきます。

 この作品は、あとがきで作者の島本さん自身が「青春小説でも恋愛小説でもなく、モラトリアムとその終わりの物語、というとらえ方をするのが、自分の中では一番しっくりきます」と述べているように、はっきり恋愛小説とも青春小説とも区分することはできません。ですが思ってみれば、現実でも恋愛や青春やモラトリアムはそれぞれがそれぞれの構成要素であり、切り離すことなど出来やしないのです。

「ほっ」と優しく背中を押してもらいたいそんな時、青春期を卒業した大人も現在真っ只中の若者も、この作品の伸びやかな空気感に癒されてみてはいかがでしょうか。(文・飯村)


クローバー (角川文庫)クローバー (角川文庫)
(2011/01/25)
島本 理生

商品詳細を見る



【レビュー】 『青が散る』 宮本輝


 青春とは一度だけ人生に現れる儚い季節のことである。
『青が散る』は、一九八二年に刊行された宮本輝の青春小説。すでにドラマ化もされており、当時から青春小説として根強い人気を誇っている。新設大学のテニス部員椎名燎平が大学に入学してから卒業するまでを描いた作品であり、彼をめぐる友情や恋愛、スポーツなど全ての青春の要素が詰まった作品である。

 夏子との運命的な出会いから始まり、二人の淡い恋の行方や、金子との友情、テニス部を創設し大会を目指していく姿は、まさに青春しているのであり、それぞれが一つ一つで十分に小説ととなるような魅力を持っている。ここで一つ場面を引用するが、この場面の美しさは傑出している。そしてまた同時に儚さや切なささえも滲みだしている。

 夏子はあたりをうかがい、それから笑顔を浮かべて近寄って来、両腕で遼平の顔をかかえ込んで、頬に長いこと唇をつけていた。夏子の全身を包んでいる細かな水滴が、遼平にまといついている水滴と混ざり合ってつぶれ、そこだけ液体になって濡れそぼった。


 父親を亡くした夏子を送り届けた燎平にお礼だと言ってキスをする。もう一度と冗談交じりにねだると、こんどは夏子の長いキスによって、霧雨のせいで二人にまとわりついていた細かな水滴が触れ合って一つの水滴へと変わる。ここにこそ青春の、恋の儚い一瞬が凝縮されているのであり、それをこうした二人の心理には触れず、情景描写のみで書き表そうとした作者の類まれなるセンスを感じる。

 まさに青春小説の金字塔とも言えるこの作品だが、その評価すべきは青春の「散る」までを描きったところにある。タイトルの『青が散る』とはまさに「青」春が「散る」ということなのだ。

 燎平は大学の四年間を振り返って「恥ずかしい時代」だったと言う。その「恥ずかしかった」大学生活を終え、「青春」を終えてしまった燎平はもう夏子に手を伸ばすことができなかった。また夏子の目からはもう「不思議な緑」が喪われてしまっている。燎平が夏子に恋をしていた時代は終わってしまったのだ。そしてそれぞれの登場人物もそれぞれに何かを喪ってしまっている。そうした虚しさのなかで、青春が散っていくことが確認されてしまうことで物語は閉じてしまう。

 青春とは一度だけなのだと確認させる小説。それは残酷ではあるが、その残酷さの裏には、一度しかない時代の美しさがたしかにあるのだ。(文責:伏見)


青が散る〈上〉 (文春文庫)青が散る〈上〉 (文春文庫)
(2007/05)
宮本 輝

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青が散る〈下〉 (文春文庫)青が散る〈下〉 (文春文庫)
(2007/05)
宮本 輝

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【レビュー】 『青春の蹉跌』 石川達三


 現在最も注目を受けるであろう文学賞となった芥川賞、その第一回受賞者である作者のこの中編作品は、豪華なキャストで映画化され、現在でも読み続けられるベストセラーとして知られている。

主人公の江藤は法学部で司法試験を受けようとしている学生で、専攻のみを学び人格的には未発達な印象を受ける。そして彼は民主主義の日本でどのようにすれば将来裕福な生活ができるかを常に考えている。理想論は掲げず、ただ現実のみを見て、成功のためには屈辱も受けるという強い出世欲を持っていた。彼の家は貧しかったのが大きな理由である。そのため登美子という学生の家庭教師をして家計を助けた。その中で二人は肉体関係をもつようになっていた。大学に行けているのは裕福である叔父から援助を受けていたためだった。江藤の目標は叔父が求めている司法試験に合格し、叔父の娘である康子と婚約をかわすことであった。登美子との関係を続ければ、彼の目標は遠くなっていく。未来のことに目を向けすぎて今のことを見ていない江藤の行く先はどうなるのか。

 江藤の将来を見据えそのために今を生きる姿は現代の安定志向を目指す若者にも当てはまるところである。近年の不況による就職難は、その風潮をますます加速させている。理想的な世界に変えるために学ぶのではなく、現在をいかにいきるかを学ぶ。それはまさに現代的で現実的な選択である。実際自分より優秀であった人物が、共産主義に肩入れして警察に捕まったときにも、それが色濃く表れている。革命や政治の理想を説く学生は、この小説が書かれた一九六〇年代においては典型的な学生であり、うまく時代背景とマッチさせている。

青春の蹉跌とはいえない重いテーマが、この小説には描かれている。読み終わったあとには実際に青春を生きている学生にも、再び今と未来について考えさせられていることだろう。(文責:澤砥)


青春の蹉跌 (新潮文庫)青春の蹉跌 (新潮文庫)
(1971/05)
石川 達三

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法政文芸編集委員会

Author:法政文芸編集委員会
法政大学国文学会が発行する文芸誌「法政文芸」編集委員によるブログ。編集の様子やオススメ本の紹介など、個性豊かに発信していきます。法政文芸のバックナンバー、その他のご質問はこちらまで→hosei.bungei@gmail.com

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